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伊礼彼方ご挨拶文

「舞台芸術を未来に繋ぐ基金」

伊礼彼方です。

我々表現者はお客様に生かされています。

舞台俳優は劇場がないと、お客様に観て頂く事ができないと仕事にならない、という当たり前を改めて思い知らされました。

個人的には5月~9月まで上演予定だったミュージカル『ミス・サイゴン』が全公演中止になりました。

しばらく稽古休みがつづき、少し嫌な予感がしていた頃、電話で通達されました。カンパニーの皆と会って話をすることもなく、1人寂しく稽古場に荷物だけ取りに行き、2020年サイゴンカンパニーは静かに解散となりました。半年分の仕事が消えてしましました。誰しもが想像しなかったと思います。

そんな未曾有な事がいま現実に起こっています。

そして同時に、舞台芸術、演劇界の現実も改めて浮き彫りになりました。

 

消えてしまいそうなこの小さな火を消さないように、未来への希望を繋げるために。

 

以前からとても興味のある分野でしたので、この度こういう機会を頂けてとても光栄です。

日ごろから個人事務所で活動している立場もあり、演劇界への危機感、希薄さ等にどう対処するべきか、常に模索していました。では、この状況下では何ができるのか悶々と考えていた時、発起人であるconSept の宋さんから「賛同者の代表として参加して頂けないか」とお誘いを頂きました。「これは演劇の神様がくれたチャンスだ」と思いました。

とはいえ、即決する前にそこは慎重に慎重を重ねる僕の性格。引っかかった表現や気になった文言・今後の展開など、賛同人としての立場からや寄付者の立場からと、いろいろな疑問を投げさせて頂きましたが、ビックリするくらい利害が一致していたので、同じ考えの仲間がいた!という感覚でもありました。

 

僕は個人事務所なので自分に出来ることには限りがあり、1人ではやれる限度がある事に数年前から痛感してます。

ましてこういう、俳優業ではない活動は恥ずかしながら長いこと「机上の空論」でした。

1人で悶々と考えてきた事を形にするのはとても勇気がいるので中々踏み込めなかったですし、非常に複雑なしがらみを潜り抜け前進していくのは僕の人生経験では容易くはない。1人では体力が持ちません。

ですが、そこに同じような疑問を持ち続け、この時期に一番に旗を掲げてくれたリーダー、仲間が現れたのです。宋さんが下さったこのチャンスは演劇業界を変える大きなチャンスだと感じています。

 

 いま、限られた生活環境の中で表現者ができる事。

 

今流行りの「配信」には賛否両論あります。気持ちは解ります。僕も一表現者として表現する場がないのは自分の存在価値を否定されているような感覚に陥ります。「自分に出来ることはこれだけか!」と自己嫌悪にもなります。とても悔しいですし、心苦しい。だからこそ「自分の技術を錆びつかせたくない!」「苦しんでいる誰かを励ましたい!」と自分や誰かのために活動し続けている多くの表現者が、どうにか輝き続ける方法を見出そうともがき苦しんでいる。配信も1つの方法だと思います。

ですが、無償で価値ある才能を提供してしまっては、それこそ本末転倒。今はこういう事態で無条件で受け入れらているかもしれません。ですが状況が変われば批判の対象になりかねない。

現にいま演劇ファンの不安の声が漏れ出しているのが聞こえます。

この状況を止めずに、平時に戻り、いざ活動を再開した時、飽きられてしまっては元も子もない。

もちろん、配信には配信の良さがあり、生のライブ感とはまた全然違う種類のモノです。

配信で見たからこそ、生の劇場に足が運ぶ、という効果を生む事もあるでしょう。

でも、まずは、自分がどう生きていくのかを考えるのが先決です。

表現者が自分自身を守らなければ生きていけない時代です。

もちろん所属している人は「事務所が守ってくれる」と信じる事は否定しません。ですが人生100年といわれている今の時代、100年後まで事務所の信頼してる誰かが守ってくれるでしょうか?

きっとそういう関係性の方もいらっしゃると思いますが、ならば自分がその信頼する方を守るために「環境を作る発想」はないのか!と疑問に思います。自助努力です。でなければ共倒れだってあり得ますよ。

僕が言ってるのは理想かもしれません。でももし「このままではいけない」と思っているのであれば、

自らが動かなければ、いままで当たり前に存在していた現実さえもなくしてしまう可能性があるのです。現にいま多くの演劇関係者が転職を迫られています。

大袈裟かもしれませんが、我々は100年後の未来を見据えながら活動をしていかなければ、衰退してしいく一方かもしれません。

特にこの先10年20年、もっとシビアな判断と決断が求められる思います。いつまた世界規模な感染や紛争に巻き込まれるか分かりません。

 

多くの方はこういう活動に消極的だと思います。色々な社会と大人の事情も絡みますしね。

そういう環境に身を置いていると不思議と自分自身も流れそうになる事があります。

それが僕には1番の恐怖です。

一人一人がもっと広い視野を持って、自分だけで立っていられる責任ある言動を示していって欲しいと願ってます。

だからこそ影響力のある表現者たちは「自分のため」「ただファンのため」だけではなく「誰かの未来のため」に活動をする必要があると思っています。そういう世の中になる事を願っています。

それこそが、演劇業界の才能ある技術者や才能溢れる表現者を守る方法だと思います。

 

いま出来る事は次に繋げる事、イコール自分が生きていくことを考える。

 

俳優、表現者、クリエーター、スタッフ、それぞれで生き抜く術は違うけど、舞台芸術に関わる火を絶やさない為に、それがこのプロジェクト【舞台芸術を未来に繋ぐ基金】だと思います。

 

この基金で多くの仲間が賛同してくださり、そして多くの方の寄付により、今にも消えそうな同業者の火が1つでも多く灯し続けられたなら、きっとこの先、演劇業界全体をも変える可能性を秘めているのではないかと。

すぐ結果に繋がるモノから5年10年かかるモノまで様々な取り組みがある中で、このプロジェクトが我々の未来の希望の火を灯し続けてくれる最初の土台になれば、これほど嬉しい事はないです。

 

1人でも多く賛同してくださる事によって、1円でも多く集まれば、今現在何人もの消えそうな才能がこの先、輝き続ける事が可能になります。

そう思うとじっとしてられません。

どうかご協力下さい。

この基金を1つの拠り所にしていきませんか?

演劇という芸術にまだ触れた事のない方や、子供たちに豊かな心を育んでもらうためにも、この基金で今苦しんでいて、そしてこの先きっと必要とされるであろう多くの才能を支援して欲しい。

ただただ切実にそう思います。

笑顔を未来に届けるために。

よろしくお願い致します。

 

伊礼彼方

 

舞台芸術を未来に繋ぐ基金